同情なんていらない 何が原因で、何が理由だとか。 きっと綱吉がどれだけ頭を悩ませていてもそんな事はわかりっこないのだ。身を焦がす蒼い瞳に心の芯までをも凍らせる赤い瞳。どちらも人の身には過ぎた焔を宿している男の心情など、きっと綱吉には一生かかったってわかりはしない。 腕に指が食い込むほど力強く掴まれた手首が、焼けるように熱い。掴まれた先からぐずぐずと焼け落ちてしまいそうだった。 「…逃げるのは、止めたのですか」 は、と耳元に吹き込まれた言葉に、ツナはひくりと体を震わせた。脳に直接響くような、低い濃厚な声音。そこに含まれた色や温度が、まるで男の−−骸の情念を直接肌に伝えてくるようで、ツナは握りしめたシーツの皺をさらに増やした。 満足に呼吸できないせいで、先ほどから酸欠気味の脳では、後ろから覆い被さっている骸に逆らう術が思い浮かばない。逃げるように身を捩ろうとも、手首を白いシーツに縫い止めている指がまるで落ち着かせるようにツナの甲を撫でるから。いやだと呻けば、懇願するように名前を呼ばれるから。 その度にツナは手を振り払う力を、非難を告げる言葉を無くしていくのだ。だから、これは決して情愛から生まれる行為ではなく。 「君が、なかなか諦めないから…僕はこんな強行に出るしかなかった。…そうまでして、僕を拒否するんですか?」 ずくり、身の内。奥まで突き入れられた熱が揺らめく。体の内部から響く突き刺すような痛みに、ツナは悲鳴を上げるかわりに目の前のシーツに顔を押し付けた。 「む…くろ、」 止めろ。制止の声は、最初から無視された。後ろから羽交い締めにされ、暴行に及んでいる男の顔を一度も見ることなく、ツナはその身で男の熱を受け入れた。 あまりの苦痛と衝撃に、つけられた傷を広げるように暴れたのは最初だけだ。泣き喚こうが叫ぼうが、骸は責める手を緩めはしなかった。頭を押し付けられ、腰を上げられ。 上がりきった熱で、互いの境界線が曖昧になる頃には、もうツナには逆らう気力も体力も残ってはいなかった。 「君が嫌いです」 くたりと、白いシーツに沈むツナの背中に小さな声が降ってきたのは、何度目の情交だったか。 繋がった腰だけを高く上げている自身の姿に羞恥さえ湧いてはこないほどに疲労していた体に、その小さな声は深く響いた。 汗の伝う背を、細長い指が辿る。 「…僕を拒否する君など…嫌いだ」 まるで、泣き出す寸前のような…頼りない声に、ツナは骸の顔を見たいと思った。 酷い男だと。許す事など一生できはしないとさえ思っていたのに。 愛しげにツナを撫でる指先に、無性に悲しくなった。 この行為は、憎悪ではなく、ましてや情愛などではなく。 熱を許容してしまいそうな程の同情にすぎないんだと、伏せた瞼の裏で、ツナは小さく泣いた。 (2008/10/28) |
これで骸ツナを初めて書いたんじゃないかな…
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