ラブロマンスが始まらない

6927ver


柔らかな絨毯に埋まる自分の膝を見下ろしながら、骸はぐ、と手に力を込めた。
うっすらをこめかみを辿る汗を拭いたい衝動に駆られたが、動くことはこの部屋に入ってから禁止されたままだ。
体温を感じられそうなほど近くにある足が、ゆらりと動く。
「ねえ、骸さん。報告は?」
自分よりも小柄で、小さな足を視界におさめながら聞く声は男にしては高く細いというのに、隠しようの無い愉悦が含まれている。
ぐ、屈辱に唇を噛み締めるが骸は求められるままに与えられた任務について、上司である目の前の人へと口を開く。椅子に座っている相手の足もとに跪いている格好の骸からは表情は窺えないが、小さな唇がきれいな弧を描いているだろうことは、見えずともわかった。
ぐい、骸の股間を押しつぶす白い足先が蠢く。
「君の命じた通り、新興勢力の…、頭は、殺さずに、ッ、」
整えられた、小さなかわいらしい爪のついた指が器用に骸の性器を挟み根本から先端へとなぞる動きに息が詰まる。
そう強い刺激ではない筈なのに、上がる一方の熱が骸の脳を焼きそうだった。溢れそうになる唾液を、音を立てて飲み込むと小さな白い足の持ち主はくすくすと零れるような笑いを上げた。
「続けて?急いじゃあダメだよ、ゆっくり・・・俺に教えてください」
ほら、と先を促すように足を動かされ、追い討ちにのように額に浮かんだ汗を拭われる。
ボンゴレという、歴史を持つマフィアのボスに相応しい威圧感を感じながらも、骸の顔を辿る指先も、股間を弄くる足先も繊細で、優しげだ。男らしい硬さは感じられるが、そこに込められた甘い誘惑にとろりと思考が溶かされていく。
細い指が、汗で濡れた目尻をつつく。
「はは。泣いてるの、骸さん?」
可愛いね、と口説かれるように囁かれ、かっと視界が赤く染まる。震える喉を誤魔化すように唾液を飲み込むが、逆に喉が鳴ってしまった。羞恥に体が反応したのがわかったのか、質の良いスーツから伸びた足が張り詰めた太股へと上る。
直接的な刺激ではないが、ぞわぞわと背骨を擽るような感覚に熱い吐息が零れそうになる。
「彼等の、本拠地であった地域は、既に…制圧済みで…っ、ふ…!」
内股を足全体で撫でられ、体の内に燻る熱に耐えながら口を開くが素直に報告させてはくれないらしい。唐突にぐい、と踏み潰すように急所を押さえつけられ息が詰まった。
服の上からでも反応しているのが良く見える。どうして細身のスーツなど着てきてしまったのだと、後悔しても遅い。
「ああ、それは獄寺君から報告受けてるよ。俺が知りたいのは、その地下で、貴方が見たものについて…」
指が、汗の浮かぶ鼻筋をつ、っと辿る。こんな辱めを大人しく受けているなど、千種や犬が知ったらどう思うか。クロームは身体を共有していたせいか、深いところで繋がりが残っている為、恐らく骸と、この上司の関係に気づいてはいるだろう。
直接口にするような娘ではないが、繋がった意識では隠しようも無い。
視界に入る淫らな行為に、眩暈と同時に昂揚感が沸いてくる。背徳な関係性に、悦びを感じているのは、確かだ。
「地下の、実験、場…では、エスト、ラ…ネオの、遺産を、使った…ぅ、」
唇をゆらゆらと指の腹で撫でていた手が顎を掴み、強引に骸の顔を上げさせる。引き連れた喉に眉を寄せるが、眼前に広がる彼の―…綱吉の瞳に脳が揺れた。
濃い、焔を宿らせた薄茶の瞳に意識が細まっていく。
「つらい、ですか?」
吐息が触れそうな程に近づいた唇が、ゆっくりと蠢く。くらくらと視界がぶれるのは、過去の実験が刻まれた記憶のせいか、それとも新たな傷を刻んでいく綱吉の声か。
「い…え、」
掠れた声に、綱吉は満足気に笑い、まるで褒美のように唇を落とした。






「という夢を見んですけど、これがなかなかに悪いものではなかったので、綱吉君やってみませんか?」
にこにこと、眠っていた綱吉の上に覆い被さってきた骸が語る出来事に、寝起きで正常に働かない頭が先ほどから煩い程の警告音を発している。
うっとりと、夢物語を話す骸の蕩けそうな顔にひい!と喉を引き攣らせて言葉を発せずにいた綱吉は、それはもう必死に、全力で抵抗を試みた。が、腰を押し付けるように体重をかけてくる相手に非力な自分が適うわけもなく。
「おおおまえな、なに・・・!!!」
変態だ!と顔を真っ青にして、自分の手を両手で覆うように掴んでいる少年に、綱吉は必死に叫んだ。




(2008/12/04)

色々とごめんなさい


TOP